どこからがドロボーなんだろう。

ニッカオフィスのウチヤマケンイチです。

テレビを見てたら、例のオリンピックのシンボルマークの話題。
最初はネットのだけで騒いでるのかと思ってました。
もうネットだけじゃ無くて、テレビでも大々的に報じられていますね。

今回騒動になっているアートディレクターさん。
業界では有名な人なのですが、正直なところ僕は顔と代表作くらいしか知りませんでした。
なので、真偽については言及できません。どうなんだろう。

けれど今回の件に限らず、デザインを仕事にしていると盗作や模倣というのはよく聞く話。
これは、他人ごとではないなと。

デザインって、他との違いの境界線がほんとむつかしい。
今回のシンボルマークのように、シンプルな要素で構成されたものは特に。

もちろん、どんなに似ててもプロの理屈では違いはいくらでも言えるんですけどね。
それでも、誰が見ても完全に違うと言える全く新しいデザインというのはほとんど不可能なんじゃないかなと。

逆に悪意を持って作品を見れば、僕はどんなデザインでもいくらだって疑いをかける自信があります。
理屈のつけ方次第でどうにでも出来るくらい、曖昧な部分があるのがデザインかと。
もちろん同じ似ているでも偶然に似てしまった場合と悪意のある盗作の場合があって、その意味合いは全然違うのですけどね。

僕は悪意をもって模倣をするようなデザイナーとは仲良く出来ません。
けれど、なぜデザインを盗むことがダメなのかと考えると、その理由もはっきりと言えないのが正直なところです。
これは哲学的な問いだなぁ、と。

自分が消費者になった場合。
そうなると人って、とたんに模倣に対して寛容になると思うんですよね。

例えば、有名ブランドの商品を模倣したプライベートブランドの商品。
そういう商品ってみんな喜んで買うじゃないですか。品質が良くて安いなら良いじゃないかって。

あれだって、商品をつくっている立場からすれば盗作であり、模倣だと思うんです。
プライベートブランドならまだしも、偽物のブランド品を知ってて買う人もいるくらいですからねぇ。

他にも知恵とか、考え方とか、生き方とか。音楽とか、サービスとか、ビジネスモデルとか。
そんなのもみんな似たものばかりで、模倣ばかり。
世の中って、実際のところ模倣だらけだと思うのです。

ではNGのラインってなんなんでしょう。
盗まれたら減る物か、減らない物か。シンプルにそういう問題である気もする。
もしくは悪意があったのか、ただの偶然だったのか。そんな正義の話である気もする。
それとも相手に被害が出てしまったかどうかか、それもと相手に気付かれてしまったかどうかか。

前に消費者も意識が高くなるといいなって書いたことがあります。
本当にこの世界から模倣や盗作を無くすならば、きっと消費者側も目が利くようにならないとダメなんだろうな。
きっと今回の騒動で盛り上がっている人だって、言われなければ気付かかなかった人はたくさんいるだろうし。
そして消費者になればプライベートブランドも悪気なく買っていると思うんです。

どこまでが戦略で、どこからが盗作なのか。
その線引きや判断基準はきっと人によって違うからむつかしい。

この話に答えがあるのかわかりません。
それでも、デザインを仕事にしている以上はもっと真剣に考えておかないといけないなって、そう思うのでした。

一応最後に言っておくと、僕は盗作はしませんよ。

理由は道徳心というよりは、ただただかっこ悪いと思うから。
あと、デザインをしていてもきっと楽しくないからです。

ウチヤマ ケンイチ
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