言葉の順番と本心。

ニッカオフィスのウチヤマケンイチです。

こないだ電車に乗ったときの話。
閉まりかけたドアに駆け込み乗車をしたお客さんが、どこかの車両にいたのでしょう。
電車が走り出してしばらくすると、車内にこんなアナウンスが。

「お客様自身がお怪我をされるだけでなく、電車の遅れの原因にもなります。」

ほほう。
これはなかなか攻めているなと。

このアナウンスには「優しい言葉」と「厳しい言葉」の、まったく違う二つの言葉が入っています。
一方でお客様の怪我を心配し、一方で電車が遅れるからやめろと言う。

本来は「だけでなく」の後に続くのは、補足的なこと。
だから、先に言った怪我が心配なことの方が大切で、あとから言った「電車の遅れ」はおまけとなりそうです。

けれど、印象は逆だからおもしろい。いやいや、印象だけじゃなくてきっと本音もそう。
このアナウンスの本音は「ダイヤが乱れるから駆け込み乗車をすんな!」でしょう。
実際、文章を逆にしてみるとおもしろい。

「電車の遅れの原因となるだけでなく、お客様自身がお怪我をされてしまうことがあります。」

ほら。なんだかガラリと印象が変わって、急に優しさというか気遣いを感じます。
文章を構成している要素は一緒なんですけどね。
後に伝える言葉の方が、なんだかその人の本心というか、本音が入っているように感じるんですね。

時間にして数秒の差。伝えてる情報も同じ。
だけれど、与える印象もその裏に隠れてる本心も全然違う。

なんだか今回の件は「電車の遅れの原因となるだけでなく、お客様自身がお怪我をされてしまうことがあります。」の方が、客は聞く耳を持ってくれそうなんですけどね。
嫌なことをいう人の言葉より、優しい言葉をかけてくれる人の言うことの方が人は聞いてしまうでしょう。

でもあれですかね。
車内放送で流れるということは、他の乗客も駆け込んだ客と一緒にアナウンスを聞くのか。
だから「お前のせいで遅れるぞ」という言い方のほうが、効果的なのかもしれないですね。
つまりは、さらし者にしてしまうという。

どちらにしても、順番だけで意味がガラリと変わってしまうなんて言葉って実に危険です。
大切なことを伝えたいときは、言葉の順番もきちんと考えなければならないなと思ったのでした。

本音を伝えたらまずい時も、逆にね。

ウチヤマケンイチ
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