百科事典みたいな地図のセット。

ニッカオフィスのウチヤマケンイチです。

先日、テレビを見ていた時のこと。
テレビショッピングで、百科事典のように大きな地図の3巻セットが紹介されていたんです。

詳細に書かれたパノラマイラストや、俯瞰図。あと衛生写真や都市の立体図なんかも掲載されているみたいでした。
確かにおもしろそうなんだけれど、最初にこれを見た時は「Googleマップならもっと便利なのになぁ」と思ってしまいました。

そうなんです。
日ごろからパソコンを使っている人なら、その地図は買わなくてもいいのかもしれません。
情報面や機能面だけで言えば、GoogleマップやGoogle earthでもよさそう。
むしろ、そっちのほうがもっと細かい情報が出ているだろうし、地図の拡大だって、縮小だって思いのままです。

ネットがなかった時代ならともかくとして、ものすごく高機能な上に無料のGoogleマップがある。
かさばる大きな百科事典のような地図をお金を出して買うなんて、なんだかなと。

一瞬そう思ってしまったのですが、でもそういうことではないんですよね。
きっと僕が感じたことが間違っていて、きっとこの地図を欲しいと思う人はたくさんいそうです。
実際この地図のセット、結構売れているみたいです。

例えば、目の前にこの地図のセットを買おうとしている人がいるとします。
その人に「Googleマップ知らないの?パソコンで見られるんだけど、もっと詳しいことが無料でいくらでも見られるんだよ」と言ってみる。
でも、きっとその声はなかなか響かないと思うんです。
この百科事典のような紙の地図には、パソコンにはない価値がたくさんあるから。

まず、紙をめくれば大きな紙面ですぐに見られるのがすごい。
パソコンを用意する必要もないし、操作も必要ない。
そして、見るべきアングルに箇所や角度、そういったものが「編集されてる」こと。これも大きい。

Googleマップの方が、自由度も高いし「情報」や「機能」は上なのでしょう。
けれど、そもそもパソコンを用意しなければならないし、使い方も知っていないといけない。

そもそもなんのために地図を見るのか、という話もあります。
地図や都市計画の専門家になるならまだしも、ただ楽しむのならそこまでの詳細な情報は必要がなさそうです。
その人が地図を見たいという欲望のそもそもの目的。それこちらが決めるわけにはいかないわけで。

学習コストって思いのほか大きいんですよね。
英語が苦手な人に「英語も話せるようになれば、もっと便利だよ」というのと同じこと。
英語が話せない僕だったら、もしそんなアドバイスをされても、ただ「わかってるよ」って思う。

テレビショッピングの他の商品にも、同じようなものがたくさんありました。
スマートフォンやネットで代用できる電子辞書やシンプルなコンパクトカメラが売られてる。

それでもそういう商品が求められるのはきっと、利用者が「高機能とか、抜群の便利さ」を求めているのではないから。
単一機能であることの「安心感」、そして「慣れていること」にこそ、価値を感じているんだと思うんです。

機能や効率の追求ではなくて、現実の、目の前の相手が必要としているものを必要な形で提供する。

人によって、状況によって価値は変わるものですね。
これこそユーザーエクスペリエンスデザインだな。

ウチヤマケンイチ
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